お会いするたびに色々教えていただく出版業界の大先輩、某取次のKさんから先日「内沼くん、ABC行った?」と聞かれました。あれだけ書いたぼくは当然「もちろん行きましたよー」と答えたものの、「何か買った?」と聞かれ、沈黙。そう、そういえば、復活を喜び、変化を発見し、色々と考え、それでも、結局買ってないんです。本屋について書いたりしているものとしてこんなことではいけないなあ、と、深く反省したのでした。
ここを読んでいるような人であれば誰しも、好きな本屋、というのがあるでしょう。例えば一番好きな本屋、一番なくなってほしくない、がんばって欲しい本屋、というのを思い浮かべてみてください。はい、あなたが一番たくさんの本を買っている本屋も、その本屋でしょうか? ご存知の通り、書籍には再販売価格維持制度(再販制)というのがあり、日本国内北海道から沖縄までどこの書店でも、基本的に同じ本の価格は同じです。ということは、ある本を欲しいと思ったとき、それをどこの本屋で買おうと、あなたにとっては変わりません。食べ物のように賞味期限があるわけでもないですから(あってせいぜい刷数が違うくらい)、「出会う」とか「探す」とか「便利」とかいった要素をひとつずつ引いていき、欲しい本が目の前にあるという状態まで限れば、極論すると全ての新刊書店はまったく差がないのですね。 そのとき、あなたが毎週買っている週刊誌があるとしましょう。あるいは広告をみて欲しくなった新刊本でもいいです。それを、どこで買うのか。週刊誌なら、出かける途中のコンビニにも売っているわけなんですが、そこをぐっと我慢してぜひ、一番好きな本屋で買いましょう、というのが、今回のお話です。 たしかに好きな本屋が、ちょっといい本が揃っているような店であればなおさら「どこでも売ってるしわざわざここで買うことはないなあ」「こんな本を買うのはちょっと恥ずかしいなあ」などと思ってしまう気持ちも分かります。しかし本屋も商売で、その本はどこで買っても同じだということももう一度考えてみれば。そう考えればどんな本でも、その本屋に投資するような気持ちで、「これからもがんばれよ!」と心の中でつぶやきながら、その本屋で買うのがスジってもんです。 これ、ほとんどKさんの受け売りです。だからこそ、あれだけABCへの愛を述べ立てたぼくがこんなではいけないなあ、と思い、自戒の意味も込めて、またブログを通じて小さく叫んでみました。ぼくも今度ABCに行ったときはちょっとでも、お金を落としていこうと思います。ちなみにぼくが一番よく新刊の本を買うのは、もちろんバイト先の往来堂なのでした。みなさんはさて、どこですか?
by uchnm
| 2004-12-02 00:28
| 本と本屋
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「ぼくたちが本と出会うときのこと」は、ブックピックオーケストラ発起人、numabooks代表の内沼晋太郎が、「[本]のメルマガ」で書かせていただいている月一回の連載です。 →mixi 以前の記事
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