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第43回:今年1年を総括してみる
毎年、この時期にきて誰もが、年末年始をできるだけ安らかに過ごすために、必死で何かをまとめたり、年末進行だといって大量の仕事を早まってこなしたりしている。もうそれもピークを迎えるころで、ぼく自身ももちろんそうだ。というわけで、この連載ももう4年目になるのだけれど、ちょうど2年前のこの12月の時期に、1年間自分が書いたことを総括したことがある。昨年はそれをやっていなかったのだけれど、今年はあらためてまた1年分、書いた原稿を読み返してみた。

第33回:コンテンツも、決まりも変わる
第34回:インターネット時代の人文書のこと
第35回:本をどう作り、どう売るのかという終わらない話
第36回:現代美術が本をプロダクトとして浮き彫りにする
第37回:本と旅とプロダクト
第38回:一番大きな、本のイベントのこと
第39回:雑誌の定期購読のこと
第40回:これから面白くなるかもしれない洋書のこと
第41回:本を「めくる」
第42回:いつか自分の書店をやりたいかもしれない

「コンテンツも、決まりも変わる」でトピックにした「ダビング10」は7月から運用が開始され、「ダウンロード違法化」も、実効性はほとんどないものの、この10月の「私的録音録画小委員会」で了承された報告書骨子案でほぼ決定した。「インターネット時代の人文書のこと」で触れた「mixiの規約改訂」はもう今や誰も話題にしないし、「現代美術が本をプロダクトとして浮き彫りにする」で紹介した施井泰平、飯田竜太の両氏はそれぞれ8月、11月に所属のギャラリーでの個展を開催した。「これから面白くなるかもしれない洋書のこと」で触れた洋雑誌も、新設された日販の子会社DIPや日本出版貿易などの手によって、ほぼすべてが流通するようになった。時が流れるのは早い、と改めて思う。

しかしそんな中、ぼくがこの1年で最も印象的だったニュースは、やはり洋販の自己破産と、あとはソニーと松下が電子書籍端末から撤退したことだ。グローバル化とデジタル化がこれだけ当たり前に進行している世の中にあって、この2つのニュースは象徴的に、出版業界がその当たり前の流れに乗り切れていないことを示していたように思う。一方、金融危機によって他の多くの業界が大きな打撃を受けている中で、ある書店チェーンの社長が「出版はましなほう」と言っていたのもまた、別の意味で印象的だった。周囲では瞬く間に流れ、内側ではゆるやかに流れる。良くも悪くも、そうなのだ。

またネット上では、つい先月のことではあるが、「書店は入場料を取ってよい」(※1)というエントリがはてなブックマークで500を超えるブックマークを集め、多くの議論を生んだことも印象的にだった。「本屋のほんね」さんはその記事を受けて、ぼくが過去に仲間とやっていた入場料制の古本屋のことを話題にしてくださったけれど(※2)、いわゆる新刊書を扱うとしても、それと同様にまったく別のものとして発想すれば、ビジネスとして成立させる可能性はいくらでもあるとぼくは思っている。このエントリから派生した多くの議論は根本的に従来の書店のビジネスモデルの範囲内で、その問題点をつつきながらその周囲をグルグルしているだけだった。けれどディズニーランドだって入場料を取ってモノを売っているわけだから、何によって人を呼び、何を収益源とするかというところから考え直せば、少なくとも思考実験はいくらでもできるだろう。秋葉原あたりいいんじゃないだろうかとぼくは思っているけれど、この話は長くなるのでまた別の機会に。それでは、よいお年を。

※1「書店は入場料を取ってよい」
http://chikura.fprog.com/index.php?UID=1227163619

※2「書店は入場料を取って良い、はてブでこんな意見が人気だったんで、書
店員として思ったことを書いてみます。 - 本屋のほんね」
http://d.hatena.ne.jp/chakichaki/20081122
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by uchnm | 2008-12-26 13:24


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「ぼくたちが本と出会うときのこと」は、ブックピックオーケストラ発起人、numabooks代表の内沼晋太郎が、「[本]のメルマガ」で書かせていただいている月一回の連載です。
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