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第28回:ブック検索に大賛成する
 今年も東京国際ブックフェアに行ってきた。当然ブースによってその盛り上がりに差があるのだけど、その中でひときわ目立って人が集まっていたブースのひとつに、Googleがある。いよいよあの「ブック検索」(※1)が7月5日、本格的にオープンしたのだ。Googleの出展は、実は2年目。去年はもっと小さなブースで、同じく「ブック検索」の可能性をアピールしていた。あれから1年。ウェブサービスのスピードとしては、だいぶ遅いほうではある。

 概要についてはたくさんの記事が出ている(※2)ので、あらためて説明することはしない。そもそもかねてからいろんな人がいろんなことを言っているけれど、ぼくはもともと、個人的にブック検索には大賛成の立場である。使ってみてその気持ちはさらに強くなった。少なくともこのサービスの普及によって本が売れるか売れないかといったら、間違いなく売れる。検索で出てきた箇所で「もう理解したからいいや」というケースよりも「これも買わなきゃ」というケースのほうが多そうなことは、なんだかんだ言う前に使ってみれば、直感的にわかる。公開レベルもきちんと選択できるのだから、立ち読みや万引きのほうがよっぽど深刻な問題だ。

 データが全部UPされるということに関する妙な危機感は、音楽や映画、ソフトウェアなどのファイルがP2Pで共有され、数年前から売れにくくなっていること、特に音楽CDの売り上げの低迷からきているものだと思うのだけれど、もともとデータではなくモノとしてそこにある本は、音楽などとはまるで状況が違う。CDで聴くこととiPodで聴くことの差が比較的少ないのに比べて、本で読むこととディスプレイで読むことには雲泥の差がある。

 また、携帯カメラによるデジタル万引き的な問題と比較して、特に見ている側がその本のごく一部の情報しか必要としていない場合に関して、それよりもさらに高精細の画像がなんのリスクもなく手に入るということへのの意見もあるだろう。しかしそういう書籍に限ってはそもそも掲載しないという選択肢もあり得るし(大抵の場合それは雑誌だ)、もし掲載するとしてもデジタル万引きと違うのは「ある本の情報を提供する」だけではなく、システムが勝手に「その他の本の可能性も提示する」というところだ。どちらも「その本を買わない」可能性はあるが、Googleの場合は「他の本を買う」可能性を付加してくれるのだから、総合してプラスになることは充分あり得る。

 そしてGoogleがやることで最も期待できるのは、そのサービスを利用したほかのサービスの可能性や、そのユーザーへの恩恵の広がりだ(そう、第一これだけ既にGoogleの無償のサービスによって日常の業務が効率化されていることもたくさんあるはずなのに、ちょっと損になりそうなことがあるとすぐ文句をつけること自体がそもそも変だ)。Google Mapの存在によって、多くの便利な2次的なサービスが公開されたように、「本の愉しみ」を広げる多くのアイデアが、これによって生まれる可能性がある(いまのところブック検索のAPIは公開されていないが、それでも充分に解析できるほどシンプルなつくりになっている)。ぼくがずっと暖めていたアイデアのひとつも、ブック検索によって大いに可能性が見えてきた。そのアイデアとはずばり、小説の舞台データベースである。

 たとえば軽井沢のある場所に旅行に行くとき。たとえば突然東京から大阪のある場所に引っ越すことになったとき。その行き先が舞台となっている小説を読んだり、携えていったりすることができたらなんて楽しいだろう。あるいは湘南のある場所にあるリゾートホテルのロビーに、その地域が舞台になっている小説ばかりが並んでいたら、なんて気が利いているだろう。そんなようなことを夢想して、いつか万が一ひと財産を築くようなことができたらそれを投資して、人海戦術で小説を読んで舞台を抜き出して地図上にマッピングして、膨大なデータベースをつくってやろうと密かに考えていた。

 しかしGoogleのブック検索とGoogle Mapを組み合わせることによって、それがなんだか実現できそうだということに気がついた。実は最近友達のプログラマーと2人でウェブサービスを開発するチームをはじめてひとつ別の新しいサービスをつくった(※3)のだけれど、これを第2弾サービスとして準備をはじめることにした。いくつかの問題はあるものの、いまのところ解決できそうである。もしできたらご紹介するので、どうぞお楽しみに。


※1 Google ブック検索
http://books.google.co.jp/

※2 書籍検索サービス「Googleブック検索」、日本語版開始(Internet Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/07/05/16256.html

※3 5つ星ミニブログ・ライフログ[staaaaar!](α版・招待制)
http://staaaaar.jp
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by uchnm | 2007-07-25 20:57 | 本と本屋


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