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第26回:今、何してる?
 さすがに「知らない」では済まされなくなってくるものというのがある。ちょっと前だとmixiをはじめとするSNSがまさにそれで、どんなにインターネットに疎い人でも、今やさすがに名前は聞いたことがあるだろうしなんとなくどういうサービスかの想像はつくだろう。旧napsterやwinMX、WinnyなどのP2P共有やyoutubeなどの動画共有については、著作権がらみのニュースで否応なく知らされたはずだし、さらに昔にはblogがそれだった。それらは徐々に、「知らない」と無視することができないレベルまで日常生活のなかに現れるようになる。

 そしていま、ひょっとするとそのレベルまで達するかもしれない盛り上がりを見せているのが、twitter(※1)およびその類似のサービスだ。いま日本で最も普及しているSNSが後発のmixiであるように、必ずしもオリジネーターがNo.1をとるかどうかはわからないが、どちらにしても日本では今年の4月あたりから、爆発的なひろがりを見せている(それによって今はアクセスが急増して、いつも重たい)。しかし、その面白さを説明して伝えることはなかなか難しい。

 「What are you doing?」という疑問文がついたテキストボックスに、ただ一日に何回も(多い人は一時間に何十回も)何かしらを入力し、それが「friends」として「add」されたユーザー間で共有される。ただそれだけのサービスが「ミニブログ」とも「リアルタイムSNS」とも呼ばれる所以は、そのどちらの要素も兼ねていてかつそれでも言い足りない何かがあることをユーザーが知っているからで、「つぶやきを記録するもの」という人も「チャットみたい」という人も「雑踏の中にいるようだ」という人も、誰ひとり間違っていない。「twitterでは友達のひとりごととasahi.comのニュースが同レベルで扱われる」といっても、ユーザーでなければさっぱりニュアンスがつかめないだろう。そのくらい、その魅力は一様ではなく説明しにくいのだけれど、blogやSNSも最初はそうだった。

 ともあれひとつ知っておくべきことは、blogが出版物になるのが当たり前になって、ケータイ小説というジャンルが生まれ、2ちゃんねるの人気スレッドやmixiのコミュニティ発の書籍が大ヒットしたように、twitterから何らかの出版物を生むことができないか、と考えているユーザーがいるということだ。

 面白いブログはそのままコンテンツだけれど、面白い人のtwitterがそのままコンテンツになるかというとそうもいかない気がしたり、2ちゃんねるやmixiのように他人とのコミュニケーションまで含めてコンテンツと捉えることもできるけれど、それではあまりに煩雑になりすぎるような気がしたりする。それらの懸念はおそらく、twitter上でのコミュニケーションがたいていの場合圧倒的にゆるいものであるからだけれど、とても自由度が高いツールであるがゆえ、それをうまく利用して何かしらの意図をもってはじめられたか、もしくは無意識にたまたま特殊なアプローチをされたものが発見されるとき、そこに出版の話が生まれることは十分にあり得るとぼくは思う。

 元がblogだろうがケータイだろうが2ちゃんねるだろうがmixiだろうが、もちろんtwitterだろうが、本という形式になるときにそれがテキストと画像の集積であることは変わらない。つまり出版の側からみれば、それらはそれぞれ本を書くことができるツールのひとつに過ぎない。『実録鬼嫁日記』も『Deep Love』も『電車男』も『メガネ男子』も、いわゆる本の成り立ちを覆すようなものではないからだ。だが一方でこれらのテキストはおそらく、それぞれのツールの特性が発揮されることなしには生まれ得なかった。だからこそまたtwitterからもtwitterらしいコンテンツが生まれることを、多くの人が予感しているのだ。

 たとえば著者が著名な小説家や詩人あるいは芸能人であれば、その日常のつぶやきはそのままでも価値があるかもしれない。あるいは何か特定のコミュニティや特殊なテーマについてのコミュニケーションを意図的に抜き出すか、そもそもコーディネイトしてしまうかして、複数の著者のものとして編集することもできるだろう。ユーザーであればこのくらいは誰でも思いつきそうなものだ。少なくとも数十字のひとことの集積になるのだろうから、読みやすい本が出来上がりそうなことは想像に難くない。

 ところで諸先輩方には恐縮だけれど、こういったインターネットのトレンドに最もアンテナが高くなければいけないはずの出版業界に、なぜだか「疎いから」といってギリギリまで試さずに済まそうとする人がひときわ多い気がするのは気のせいだろうか。少なくともmixiをやっている人であれば、実際にやってみるまではいくらmixiに関する記事を読んだところで、そこで生まれているものに対する感覚をつかむことができないということを、実感として知っているだろう。twitterもまさにそういうサービスなので、とりあえずやってみたほうがいい。そこから面白いコンテンツが生まれ得るか否かを、やりもしないで訳知り顔で語ったりしても、なんだかとてもつまらない。

※1:twitter
http://twitter.com/
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by uchnm | 2007-05-25 14:59 | 本と本屋


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