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第24回:インタビューユニットと、ぼくがしたいインタビューのこと
インタビュアーと写真家というのは似ている。写真に関しては人間を撮る場合の話だけれど、どちらもある技術をもって、それぞれのやり方で相手をうつす。その成果物に触れる受け手は、その対象がどんな人なのかという情報を、それぞれの技術と作品性を通して受け取る。

しかしたとえば、写真のモデルを募集したら「ぜひ自分を撮ってほしい」という人がどんどん集まるような有名な写真家はたくさんいるけれども、インタビューの相手を募集して「ぜひ自分をインタビューしてほしい」という人がどんどん集まるような有名なインタビュアーというのはいるのだろうか。この人に撮られるとどんなモデルも新たな魅力が引き出される、という評価を受けている写真家はいても、この人にインタビューされるとどんなインタビュイーも新たな魅力が引き出される、という評価を受けているインタビュアーというのは、あまり聞いたことがない。

なぜだろう、と考えてみたときにひとつ思い当たったのは、インタビューには批評がないからだ、ということだった。写真には写真批評というジャンルがきちんと存在するし、日常のレベルでもこの写真はいいとか好きだとか、この写真はあまりよくないとか誰に似ているとか、そういう話をする文化は出来上がっている。しかしインタビューにおいては、このインタビュアーのインタビューはいつもすごくいい、といった会話さえあまり生まれることがない。インタビューはインタビュアーの作品ではない、あくまで相手を引き立たせることが目的であって、黒子に徹するべきだ、といった意見もあるだろう。しかしそれとは別に、インタビューにも確実に技術やカラーというものがあるはずで、それを切磋琢磨するためにも批評は必要なのではないか。

そこでぼくは実際にインタビューを生業の一部にしている人が集まり、そういったことについて考えながら独自の活動をしていく、インタビューユニットをやりたいと思っている。まずはインプットとして、インタビューに関する本はもちろん、さらに面接の本や心理学の本、交渉術など関連の書籍をみんなで読む。同時に、その月に出た雑誌で一番面白かったインタビューを話し合って決めたり、数多あるインタビューサイトの更新情報をまとめたりしてみる。いいインタビューと悪いインタビュー、ということに関する自分たちなりの基準作り、というのが必要なのだ。それを経て、いろんな実験的なインタビューのプロジェクトを立ち上げていくアイデアも、既にいくつかある。その中で特に気に入っているのは、街角の似顔絵屋ならぬインタビュー屋をやってみようということ。写真家と同じ理由で、インタビュアーは似顔絵屋とも似ているのだ。

そしてもうひとつ、ぼくがインタビューという手法を通じて、個人的なライフワークとしてやってみようかと思っていることがある。それはその人の「一番大切な本」という切り口で、有名無名かかわらず様々な人の話を聞く、という活動だ。その人の「一番大切な本」とその内容、そしてそれがどうして自分にとって一番大切なのかという話を聞くことから広げて、その人がどんな人で、どんな仕事をしていて、どんな未来をみているのかということを浮き彫りにするようなシリーズをやって、その数をあつめていく。

そのことはぼくにとって、本のセレクトという実際の仕事に直接役に立つだけではなく、人にとって本とは何なのか、という大きなテーマに迫っていくことでもある。自称でも構わないのでインタビュアーとしてのプロ意識を持ち、小さくてもいいからメディアを持つことさえできれば、インタビューという手法を学ぶことは、誰でも好きな人に会いに行って話を聞くことができるようになる能力を身につけることなのだ。ぼくが人と本についての謎に迫っていくことができるように、誰かにもこの世界の何かに迫っていく力が与えられる。そのことは、とても素敵なことではないだろうか。
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by uchnm | 2007-03-25 00:00 | 本と本屋


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