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第十三回:「本2.0」と言い切ってみて思いついた
 WEB2.0(※1)という言葉も、少しずつ一般に浸透してきた。週刊誌には「WEB2.0って何?」っていう見出しが躍り、と同時にそのあやうい概念に拒否反応を起こすようになってしまった人も増えている。というわけで、調子に乗って何でも「~2.0」と呼んでみるこの言い回しもそろそろ飽きてきたころではあるけれど、それでもやはり敢えて一度「本2.0」とお題を立ててみると、違ったものが見えてくるから不思議なものだ。

 「2.0的」な技術といわれるものはいくつかあるけれど、そのひとつにソーシャル・ブックマークがある。「del.icio.us」(※2)や「はてなブックマーク」(※3)なんかがそれだ。使ったことのない人にはぜひ実際に試して理解してもらいたいのだけど、敢えて説明するならばその名の通り、ブックマークをソーシャルに共有するサービスである。自分が読んで面白かったブログのエントリなどを、ブックマークとしてそれぞれに自分なりの「タグ」をつけて分類する。サイトではそれぞれのブックマークが公開されており、その記事やタグを介して人と繋がることができる。一方、ブックマーク数の多いエントリは人気のURLとしてサービスのトップページで表示され、そこはあたかもニュースサイトのような様相を呈す。いわば収集した情報を共有することで、結果的にそれらの情報を選択・選別するためのデータを構築することになるというわけだ(やっぱり、とても上手く説明できたとは思えないので、「?」となったらぜひ使ってみて欲しい)。

 一方、本でデジタルといえばやはり電子書籍なわけだけれど、その電子書籍を検索できるポータル「hon.jp」(※4)が最近オープンした。提供しているサービスやファイル形式が複数存在し、それぞれに違う本が存在して見えにくかったこの業界の、主要なサイトを横断できる検索エンジンである。いまのところ基本的にそれぞれのサイトに飛ばすだけの無料サービスで、例えばユーザーの購入データなどを追うことはできないが、少なくともブレークスルーが見えてこない電子書籍業界にインパクトを与える動きであることは間違いない。今後もどんどん改良が加えられていく予定のようだ。

 というわけで思いついたのが、ソーシャル・ブックマーク+電子書籍で「本2.0」、名付けて「ソーシャル・クオーテーション」というのはどうだろう、ということなのである。本を読んでいるときに付箋を貼るように、電子書籍を読んでいるときに気になるところをドラッグすると、「クオーテーション」すなわち「引用」をして、サイト上の自分のスペースに保存できるようなリーダーを配布する。そのときもちろん、自分なりのタグとコメントをつけることができる。それは電子書籍のポータル上で本のタイトルごとに紐づけられた形で共有され、重なる箇所を引用したユーザーが複数いる場合は、そのクオーテーション(=引用箇所)をノードとして人が繋がることができる。あくまで一部分の引用なので、文字数の上限をつけるようにすれば、全ての本のクオーテーションが無料で自由に閲覧できるようになっていていいだろう。

 例えばあることについて調べている人は、タグを頼りにしてクオーテーションを検索できる。自分が持っている本であればすぐにその前後を参照でき、逆に持っていない本にぶつかった場合はそのまま購入ページに移動できるようになっていればいい(こうすることで売り上げにも貢献するだろう)。あるいは小説だったりすれば、その本で一番多くの人がクオーテーションしている箇所を読むことがひとつの選択基準になるだろうし、自分が既に読んだ本につけられているクオーテーションを辿っていけば、いろんな人のタグとコメントによって読みがいっきに深まるはずだ。アマゾンで長々と感想を言いっぱなすのではなく、気になるところを引用してはちょこっとコメントを残すくらいのほうが、そもそもウェブっぽい。共有という概念によって、現状はただ読みにくいだけの(と思っている人が多い)電子書籍に、デジタルで読む明確な理由を付加することができることは、とても大きな意味を持つでしょう、というわけで、いかがでしょうhon.jpさん。
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by uchnm | 2006-02-25 12:41 | 本と本屋


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